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男は芸術家だった。
若い女性の体をモチーフに、残虐で猟奇的な死体の像を造り出す。
人の『死』を残酷に演出することで『生』は完成する。
男はそんな理念を胸に作品を造り上げていく。
まともな精神など不要。常識の枠に囚われてはいけない。
そうして完成した作品を、男はコンクールに応募した。
しかし展示までに至る審査で、男の作品は落とされた。
その余りの生々しさグロテスクさに、見たものは気分を害し、酷いものでは吐き気をもよおす者もいた。
当然ながら、男のそれは芸術とは認められなかった。
芸術とはとても呼べない醜悪な解体死体。
まともな精神の持ち主なら当然の判断だった。
男の作品は陽の目を見ることなく消える運びとなった。
なぜ?
男には理解出来なかった。
常識の枠に囚われた哀れな者達の考えで自分の最高傑作が否定された。
いや、きっと自分の才能を奴らは恐れたのだ。
一度でも世間の目に触れることが出来たなら、きっと自分の芸術は認められるはず。
その為にはどうすればいい?
そんな悩む男の前に悪魔が現れ囁いた。
『――――力をあげよう』
混乱する男に悪魔は続ける。
『この力を使えば、より素晴らしい作品を創造できる』
しかし、どうやって?
『本物の人間を使うのさ』
それはダメだ! 本物の人間だなんて!
『世間に君の才能を認めさせるんだろう?』
しかし!
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