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「もう、早くしないと遅刻しちゃうよー!」
「わーってるよ! すぐ行くっつーの!」
玄関からのルームメイトの催促に、白髪の青年――乱堂蓮華が大声を返す。アニメの缶バッヂ満載の肩掛け用の鞄に、愛用のノートPCと菓子類を詰め込む。
教科書や授業で使う道具などは、全て教室の自分の机に置いてあるため、鞄に入れるのは授業に必要のない余計なものだけ。
しかし余計とは言っても、蓮華にとっては大事なものだ。携帯電話と財布を持ったのを確認し、部屋の明かりのスイッチを消す。
鞄を肩から斜めに掛けて部屋を出る。リビングの明かりはすでに消え、玄関口の明かりだけが着いていた。
そこに一人で立っているのは、蓮華のクラスメイトにしてルームメイトだった。
肩にかかった薄いカスタード色の髪が揺れ、パッチリとした愛らしい目が蓮華を捉える。
形のいい眉はハの字に下がり、少し膨らんだ頬は僅かに赤らんでいた。
間違いなく美少女と呼べるレベルだ。
男なら誰でも見とれてしまうであろう容姿だったが、生憎と蓮華にはピクリともこなかった。
なぜかと言えば、あれは男なのだから。
リナリア・シュトレーゼフ。それがあの美少女改め美少年の名前だ。
性格は誰にでも優しく穏やか。
成績優秀、眉目秀麗。運動神経抜群。おまけに家事も万能ときている。
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