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立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は王子様を地で行くパーフェクト人間である。そして、そんな王子様を女子が放っておくわけがない。
登校時には遠巻きに眺められ、下駄箱にはラブレターが溢れ、教室では手作りのお菓子を貰い、放課後には屋上で告白される。
ザ・美少年。ミスター王子様。美ショタ貴公子。まるで安いギャルゲの主人公。モテの中のモテ。キングオブモテスリム。
それが乱堂蓮華の親友、リナリア・シュトレーゼフなのだ。
「ちっくしょーこのモテスリムが! おまえのモテ成分をオレによこせ! そして爆発しろ!」
「き、急にどうしたの蓮華? お腹痛いの?」
「やめろ、気を使うな! そんな純粋な目でオレを見るんじゃない!」
「? うーん。よくわからないけど、ごめんね?」
「……なにこいつイケメン」
こちらを見上げてにっこり笑うリナリアに、もはや渇いた笑いしか出ない。
しっかりと戸締まりを確認し、二人が住む学生寮を出発してから五分。学園の敷地内にある校舎に通じる通学路。赤煉瓦の敷かれた並木道をリナリアと並んで歩いていた。
「ね、蓮華。少し走らない?」
「えー、なんで? 疲れるしイヤだ」
「だってホラ、時間が」
リナリアが自分の携帯電話の画面を見せる。待ち受け画面に表示されている時刻は八時丁度。
蓮華とリナリアが住まう寮から、人材育成ギルド“祝福の鐘(リィンベル)”校舎までは徒歩三十分。朝のSHR(ショートホームルーム)が八時三十分から。
それを考えると、少し急いだほうがいいのかもしれない。
「おーおー、優等生だねえリナリアくんは」
「もう、茶化さないの。学生なら当然のことでしょ?」
蓮華としても遅刻は避けたいところ。茶化しながらも、リナリアの案に乗って走り出した。
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