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「オラァッ!!」 ある路地裏で、人の凄まじい声と音が聞こえていた。 そこを通行する人々は、自分が巻き込まれぬ様、足早にその場を通り過ぎて行く。 今の時刻は6時半。 春と夏の境目だが、路地裏は流石と言ったところか。 薄暗く肌寒かった。 うっすらと雲に隠れてぼんやりとした月が顔を出す頃、先程の凄まじい音が止んでいた。 どうやら喧嘩にピリオドが打たれたらしい。 手に着いた返り血を拭い、口を切った際流れ出た自分の血も着ているパーカーの袖で拭って路地裏から出てきたのは一人の少年だった。 年は16~17ぐらい。 整った顔付きが月明かりに照らされて一際美しく輝いて見えた。 ――その月明かりに少年は顔を上げた。 顔を出した月に、少年の綺麗な緋色の瞳は微かに揺らぐ。 「………満月かぁ。俺の好きな…」 次の言葉に少年は口を紡いだ。 満月を懐かしそうに見上げる少年の表情はどこか哀しそうだったが、ふと、視線を地面に戻すとパーカーのフードを深く被って、賑やかな通りに消えて行くのだった。 .
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