始まりの章

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始まりの章

 7月2日、この日はひどく雨が降っていた。  記録的豪雨、この普通すぎる町、徒端町では、数年に一回とない滝をも連想されるこの天気。  当然、住民は滅多に外には出ないよう心がけるであろう。  しかし、海沢秋斗(かいざわあきと)は、並大抵な人間とは全く違った。  どれほどこの時を待ったことか。  最初にこの計画を立てたのは半年前。  殆ど運任せな作戦は、勝利の女神が秋斗に微笑みかけているようにこの作戦においてはすばらしいほど適した気候になった。    安易に近寄れぬそれは、半年前の秋斗にとってどれほどの苦難か。  しかし、今は違う、そう、女神の微笑み、そして作戦がある。  この半年、秋斗は色々な事を経験し、学び、そして研究した。  今の秋斗には、半年前とは決定的に違う何かを持っていた。  それは何か、そう、それは何事も恐れぬ勇気。  
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