第3話 『交 差』

7/63
前へ
/722ページ
次へ
「お前は俺にもよく似てるからな。 ……愛する人と離ればなれの生活なんて耐えられないだろうし、年内が限界だろうって踏んでた。 夏に大きな仕事があるとなれば、それを最後の舞台にって決めるんだろう。 それなら最初で最後の親子共演も悪くないかなって思ったんだ」 そう言って笑みを浮かべた樹利に、まりあの胸が熱くなった。 やだ、なんだか泣きそう。 「あ、ありがとう、樹利……。 でも何もかもお見通しで、ちょっと悔しいよ」 「親は子供が思う以上に、子供のことをお見通しなんだよ」 樹利はそう言ってまりあの頭をクシャッと撫でた。
/722ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20923人が本棚に入れています
本棚に追加