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「はぁ……」
「音無、わかってんだろうな」
「わかってるって」
そう返事をして、もう1度深呼吸をする。でも、何度試してみてもため息を吐いているような気分にしかならなかった。
音無尚斗(オトナシ ナオト)、15歳。
突然ですが、今日の昼休みに告白してきます。
……罰ゲームで。
俺、音無尚斗は生まれてから今まで15年間1度たりともモテた経験が無い、いわゆる『非リア』という類の人間だ。リア充の反対、つまりリアルが充実していない人。もちろん誰かと付き合った事は無い。これをもちろんと言ってしまう自分が悲しい。
当然告白された事は無いし、逆に俺から誰かに告白した事も1度も無い。どうせ振られるし!
そんな俺なので、例え罰ゲームと言えども女の子に告白するというのはとてつもない事な訳だ。
この罰ゲームは、俺がいつも一緒にいる奴らの間でこれまでも数回行われている。俺みたいなモテない奴らの集まりで、非リア同盟とか呼ばれている。その通りなので反論する気にもなれない。それどころか最近では俺達もそう呼んでいる始末。
罰ゲームを俺がやるのは初めてだが、誰かにやらせた事は何度かある。だから断ったり逃げたりもできない訳だ。因果応報というヤツだ。
俺はふと、斜め前の席の女の子を見た。比喩などではなく、本当に他の人とは何かが違って見えた。
俺が告白する相手は、本気で片想い中のクラスメート、春川陽菜(ハルカワ ヒナ)さん。
小柄で色白で明るい茶髪、短めのほわほわした髪型(友人曰くショートボブと言うらしい)。明るくて癒し系、何事も一生懸命頑張るタイプ。そしてオマケにちょっぴりドジと、世の男の理想を神様が具現化したような子だ。俺としてもドストライク! っていうかむしろデッドボォール! って感じ。
俺はそんな陽菜さんの斜め後ろの席から、授業中に陽菜さんを眺めるのが毎日の楽しみだ。たまに鞄に付けているネコのぬいぐるみをいじってるのがもうね、5、6時間は見てても飽きないね。
この罰ゲームは女の子と仲良くしすぎるとやらされる。仲良くし過ぎるっていうのが結構曖昧だけど、まぁ何というか、早い話嫉妬するようなレベルはアウトって訳だ。
でも俺の場合は何つーか不可抗力というか不慮の事故な訳で。未だに罰ゲームをやらされるのが納得行っていない。
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