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「5000って……」
「怖がる事は無いさ、これは全ての人に言える事だ。そしてその大半は、リンパ球などの免疫細胞によって毎日退治されている」
「何だか、知らない事だらけです。自分の体の事なのに」
「それは全ての人類に言える事だよ。私達医者だってそうさ、人の体の仕組みにはまだ謎が多い」
朝陽さんはそう言うと何かに気付いて俺達から顔を逸らした。そっちを見ると、林田さんがトレイに料理を乗せてこっちに向かっていた。
「はいよ、お待たせしました」
「これは良い、揚げ物は久しぶりだ」
テーブルに置かれた料理を見て朝陽さんが言った。ご飯に味噌汁にサラダ、そして大きな皿にカツが沢山乗っている。
「家で作ったりしないのか?」
「あぁ、片付けが面倒なものは作らない。特に揚げ物は跳ねた油を拭くのが大変だからね」
「健康とかそういう理由じゃないのが朝陽さんらしいと言うか何と言うか……」
「食べ過ぎなければ問題無いさ。その程度で健康を害するなんて言っていたら何も食べられなくなるよ」
そう言い朝陽さんはカツを口に運んだ。サクサクと良い音がする。
「ま、俺も揚げ物は好きだから食って良いって言われたら安心するけどさ」
「若いうちはあまり気にするべきじゃないよ。どのみち年を取れば食べたくても食べられなくなる……おっと、何をするんだ」
大皿に盛られたカツを取ろうとすると、朝陽さんが皿を持ち上げた。
「え、俺も食おうと」
「これは私のだ」
朝陽さんはそう言い大皿を机に置き直した。ふと横を見ると、秋葉原さんが何だかひきつった顔をして厨房を見ていた。
「はいはい、お2人もお待たせしました~」
林田さんがそう言いやってきた。ドン、ドン、と重たい音がした。朝陽さんの目の前にある大皿と同じ物が、俺と秋葉原さんの目の前に置かれていた。
「…………これ、1人分?」
「足りなかったら言ってね、ご飯ならおかわり自由! 若いんだからいっぱい食べなきゃ!」
続けざまにサラダと味噌汁、そしてご飯が運ばれて机の上はもう置き場のないぐらい埋まってしまった。しかも俺のご飯だけ丼だ。
「……チャレンジメニューかなにか?」
「日替わりランチだ」
朝陽さんが答えた。確かに朝陽さんは間違いなくランチを3人分と言っていた。でもこの量は……俺ですら何とか食べれるか微妙なところだ。秋葉原さんは……あ、固まってる。
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