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シャワーを浴び終えてから玄関を見ると七海はいなくなっていた。リビングにもいないし、自分の部屋に行ったみたいだ。
「……やべ」
シャワーを浴びたせいか、何だか俺も眠たくなってしまった。別に今から何かをする予定なんて無いけど、まだ昼過ぎだと言うのに寝るのは何だかもったいない。
台所に行きインスタントコーヒーを淹れる。砂糖とミルクを入れる前に何となく朝陽さんの真似でそのまま飲んでみる。うん、苦い、無理。
砂糖とミルクを入れたコーヒーを持ちテレビ前のソファーへ行く。テスト期間で観れなかった録画でも観よう。もう少ししたら尚斗に連絡してどうなったか聞いてみるか……。
「あんた、そろそろ起きたら?」
不意に後ろから声がして、俺は目を開けた。テレビの画面は録画した番組のリストが表示されている。
「……俺、いつから寝てた?」
「帰ってきてからずっとじゃない?」
そう言って母さんは俺の横に置いてあるコーヒーを指差した。まだ半分以上残っているコーヒーはすっかり冷めていて、しかも側面に付いたコーヒーが固まっている。
「寝ないようにってコーヒー淹れたのに……」
「飲まなきゃ意味ないわよ」
母さんは呆れたように笑って奥の部屋に歩いていった。時計を見てみるともう6時だ、ソファーで座る体勢のまま寝ていたせいか体が痛い。
「いてて……そういやアイツどうなったかな……」
えーっと、確か昼飯の時に春川さんのお母さんが迎えに来るって焦ってた。さすがにもう家にいるはずだ。
スマホを見てみたけど着信もメッセージも無い。特に問題無かったって事だろう。ちょっと電話してみるか……。
「…………いや、やめとこ」
たぶん尚斗も疲れて寝てるだろう。何もなく終わったならそれで良い。何かあったらすぐ電話してくるだろうし。いや、朝陽さんと一緒だと思ってしなかった可能性はあるか。
ちょっと考えた結果、LINEでメッセージだけ送る事にした。数分経って確認したが既読は付いてない。やっぱり寝てるみたいだ。
「……俺も寝直そっかな」
ソファーから立ち上がって伸びをした。大して疲れてた訳じゃないけどちっとも疲れが取れた気がしない。
「寝ても良いけどもうご飯作るわよ。そういえばあんた、テスト大丈夫だった?」
着替えを済ませた母さんが再びリビングにやってきた。
「あー、うーん、まぁ。少なくとも欠点にはならない。ってかもう飯か、あんまり腹減って無いなぁ」
寝てたせいもあるけど、まだあの大量のカツを全然消化しきれていない。
「そう、欠点にならないなら良いわ」
母さんはそう頷いてキッチンに向かった。理想が低くて助かる。
「ご飯は余ったら明日にでも食べなさい。さて、問題はあの子ね。もう受験だし、また音無さんのとこに預けようかしら……」
そう言いため息を吐いて上を……2階で寝ているであろう七海を見た。またというのは当然、昨年俺がそうなっていたからだ。
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