7ー2.Prospect

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  「七海、あんた高校どこに行きたいの?」 「えー、別にどこでも。私も陽山で良いかな」  呑気に言った七海に対して母さんはまた溜め息を吐いた。 「……これは本当にあんたも音無さんのとこに預けないといけないわね。一応訊くけど、陽山の倍率わかってるの?」 「倍率ってなに?」  またまた呑気に七海が言う。今度は溜め息も出てなかった。 「あれだ、陽山に入りたい人が何人いて、実際に入学できるのは何人かって話だ。100人の定員に対して受験する人が200人いたら2倍」 「おー、なるほど……じゃあ2倍?」 「去年の一般入試は3倍だったな。3人に1人しか受からない」 「え、無理じゃん」 「私立はやめてよ、お金かかるから」 「おにぃ、よく受かったね」 「あー、それはまぁ、地獄の合宿の成果だな」  俺は受験勉強を思い出しながら答えた。あの時の事は思い出しただけでもテンションが下がる……。 「もうどうしようかと思ったわよ。まさか推薦入試のタイミングでインフルなんて」 「いやー、俺もマジかって思った。あと終わったとも」  インフルエンザでも学校に行ければ入試自体は受けられるみたいだった。でもその時の俺は起き上がる事すらできなくて諦めるしかなかった。  それからはもう音無家に泊まり込んで一般入試の猛勉強だ。この間の日本史のテスト勉強が比にならないレベルのスパルタで、間違いなく人生の中で1番勉強した1ヶ月だ。 「ホントにもう、音無さんがいなかったらどうなってたか……」 「はっはっは、頭が上がんねぇや」  朝陽さんの助けが無かったら俺は滑り止めで受けていた私立の男子校に入ってただろう。どうして男子校を受けたかと言うと、 共学が良かったからだ。落ちたら男子校というのが最後まで俺が頑張れた理由でもある。ちなみに朝陽さんの入れ知恵だ。推薦で落ちた時に勉強を教える事もあらかじめ考えてたのかもしれない。 「翔希、学校でちゃんとしてるわよね? 七海が受けるってなったらあんたの素行も関わってくるんだからね。あの海部の妹かぁ、入れたくないな、なんて思われたら最悪よ」 「うわ、気を付けよ」 「頑張っておにぃ!」 「1番頑張るのはあんたよ! 1学期の成績によっては夏休みに音無さんのとこに預けるからね! あんたこそ何としても推薦入試で行かないといけないんだから!」 「それだけはぁ!」 「朝陽さんに迷惑だろ……」  とは言え面接の練習の時にも朝陽さんに見てもらってたし、例え推薦入試で受ける事になってもお世話になるだろう。  
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