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「わり、待たせた」
翔希がファミレスに来たのは、俺達が着いてから30分ほど経ってからだった。
「どこに行ってたんだ?」
予想よりもかなり遅かったので訊いてみると、翔希は「いやぁ」と渋い顔をした。
「知ってる先輩のとこ。ただまぁ、予想はしてたけど関わりたくないってさ」
「……やっぱり、そんなに危ない人なのね」
「噂なんて基本は眉唾物だけど、少なくともデタラメじゃなさそうだ。あの人と同じ高校に行きたくないっつー事で、同じ中学の人は俺らの学年にもほとんど陽山にいないらしい。そのせいでヤバさの割には噂が広まってないらしいな」
「そんなに……」
もうその話だけでいかに危ない人か想像できてしまう。
「……どうしてそんな人が陽菜を好きになったんだろう」
「たぶん、俺らの思う好きと感覚が違うよ。付き合いたいって言うか手元に置いて独占したいっつー、本当にヤバいやつ」
「そんな自分勝手な事……! って、海部君に言うのは間違ってるわよね」
秋葉原さんが一瞬声を荒らげた。横に座っている陽菜さんの方を見て、表情を強ばらせた。
「陽菜、それ……」
秋葉原さんに向かって陽菜さんが頷いた。何の事を言っているのかわからなかったけど、秋葉原さんが陽菜さんのスマホを俺達に向けてその意味がわかった。
「……これ、あの先輩の番号?」
「わからないけど、たぶん……」
着信が5件、全部同じ番号からだ。直近のものはほんの数分前になっている。
「どうしよう……」
「出なくて良い。それと、絶対に1人にならないで。なるべく大人数でいるようにして。ただ、女子だけでいるのもちょっと怖いな」
「うん……」
翔希の言葉に陽菜さんが小さく頷いた。
「まず、学校では基本的に俺と尚斗がいるようにする。一緒にいるって言うか、俺達の目に付く所にいてもらう。それと、春川さんは電車通学だったよね?」
陽菜さんが頷くと、翔希は俺と秋葉原さんを交互に見た。
「武畑先輩、出身の中学から考えてたぶん電車通学なんだ。春川さんとは逆だから電車が被る事は無いはずだけど、駅で鉢合わせる……と言うか、待ち伏せされる可能性はある。だからしばらくは、駅で待ち合わせて学校に行こうと思うけど、来れる?」
「な、なるほど。俺は大丈夫」
「私も。でも、そんなので諦めてくれるかしら。一時しのぎじゃなくて、きっぱり解決できる方法があれば良いんだけど……」
「うーん、無いわけではないと言うか、あるにはあるって言うか」
「な、何だそれ」
そう言うと、翔希は数秒俺を見た。
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