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「ごめんなさい、そうとは知らずに。でも、本当に巻き込まれて困ってはいない?」
「それはもちろんだよ。正直俺、自分から助けになるなんて言えなかったから……あそこで言ってくれて感謝してるぐらい」
そう言うと、秋葉原さんは俺の目をじっと見た。何が言いたいのかわかり、俺は思わず目を逸らした。
「そんな事言うと、いつも翔希にもっと自信を持てっていわれるんだけどさ」
「……そうね」
言いたい事は当たっていたらしく、秋葉原さんは少し間を空けて頷いた。
「自信を持つべきって言うか音無君は、もっと自分に自信を持っても良いと思う」
「……そうかな」
俺はそうとしか返せなかった。
自分に自信を持つという事が、あまり想像できなかった。だって、俺ができる事なんて一体何があるんだって話だ。そんな事は大抵誰にでもできる事で、それが自信になんて繋がる訳がない。
「尚斗、秋葉原さん」
前で話していた翔希が俺達の方を向いた。
「明日の朝から、しばらくまずは俺が秋葉原さんを迎えに行く。春川さんとは秋葉原さんが1番仲が良いから目をつけられるかもって事で念のため。で、それから2人で尚斗の家に行って3人で駅に向かう。これでどうよ?」
「俺は先に駅に行ってたら駄目なのか?」
「まぁな。お前もほら、春川さんと仲良いの結構知られてるから。絡まれる可能性ある」
そう言われ背筋が寒くなった。あんな人と1対1になったら何も言えなくなりそうだ……。
「それじゃ春川さん、また明日」
そう言う翔希に対して陽菜さんは軽く頷いただけだった。改札を抜け、やってきた電車に陽菜さんが乗ったのを見送り俺達も帰る事にした。ここからだと俺と翔希は別方向だ。
「じゃあ、明日また連絡するわ」
翔希がそう言ってスマホを持った手を振った。
「あぁ、わかった……?」
頷くと、翔希は俺を見たまま一瞬固まった。何かを伝えようとしてる……?
「んじゃ秋葉原さん、行こっか」
翔希が俺から目を放して横にいた秋葉原さんの方を見た。何か言いたかったのは気のせい……じゃないと思うけど。
「それじゃあ音無君、また明日」
「あ、うん。また明日」
俺は頷いて歩きだした。何だか釈然としない気持ちだ。
そして、その答えはすぐにわかった。家の近くまで来た所でスマホが震えた。
『さっきのファミレスに集合』
翔希からのメッセージだった。そういえばわざとらしくスマホを見せていた。俺は『了解』とだけ返事をし、アパートを通り過ぎた。
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