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「悪い悪い、秋葉原さんにあんまり勘づかれないようにと思ってさ。あれ、またドリンクバー頼んでくれたのか」
「いや、さっき何も飲んでなかったの覚えてたみたいで、そのまま居続けた事にしてくれた」
ファミレスで10分ほど待っていると翔希がやってきた。どうやら秋葉原さんには聞かれたくない話のようだ。って事は、たぶん陽菜さんにもだろう。
「いやぁ、面倒な事になったな」
コーラを一口飲み、翔希が呟くように言った。
「本当だよ、このまま何事も無かったみたいになれば良いのに……」
「それが1番の悪手。その話をしたかったんだよ」
翔希はそう言ってコーラの入ったグラスからストローを抜き俺に向けた。
「まず、絶対に2週間以内にどうにかしなきゃなんねぇ。俺としちゃあ、できれば今週中にカタを付けたい」
「そ、そんなにすぐに解決するのか?」
「するのかっつーか、しなきゃいけねぇんだって。2週間後に何があるよ?」
「何って……」
そう言って2週間先を思い浮かべた。別にこれといった行事は無いはずだ。そもそも2週間後は夏休みに入って……。
「……夏休み」
「そう。ヤツからしたら動き放題だ。そうなったら本当にヤバいっつーのはお前でもわかるだろ?」
俺は無言で頷いた。学校がある日ならある程度の行動は把握できる。それは陽菜さんの行動もだし、武畑先輩の行動もだ。
「連絡が来たって無視すりゃ良い話だけど、家まで来られたらそうもいかなくなる。春川さんの家なんて、本人に訊かなくても知る方法はある」
「ほ、方法って?」
「中学が同じヤツを片っ端から脅せば誰かは言う。さっきも言ったけど、そういうヤツだ」
翔希がため息を吐いた。本当にそんな事をするというのが信じられないけど、それは俺があの人を知らないからだろう。
「だから夏休みまでには何としても解決しなきゃなんねぇ。しかも口だけじゃなくて、本当に向こうが二度と関わらないって決めるのが絶対だ」
「そ、そんな事ってできるのか……?」
「やるしかねぇだろ。できれば土日も挟みたくねぇ」
つまり、今週中に何とかしないといけない。それも、完全に諦めされないといけない。
「……で、だ。最初の話に戻るけど、何もしないまま夏休みになっちまうのが1番ダメなんだ。意味はわかるか?」
「つ、つまり……こっちから何かする?」
翔希は「そういう事」と頷いた。あんな人にこっちから何かをするなんて……考えただけで手が震えてきた。
「んで、1人助っ人を呼んである。もうすぐ着くはずだ」
翔希はそう言ってスマホを見た。
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