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「助っ人……?」
「ぶっちゃけると俺にもどうにも無理な相手だからな。俺かお前の腕っぷしが強ければ力ずくで何とかなるんだけど」
翔希はそう言うと俺を見て「無理だよなぁ」と呟いた。間違いない、喧嘩なんて最後にしたのは小学生の低学年だ。しかも相手は目の前にいる翔希で、翔希も俺が知る限りはそれが最後だ。
「それにお前もだろうけど俺も武畑先輩の事なんて大して知らないから、多少知ってた人に頼んで来てもらう事に……ん、来た。尚斗俺の横に来い」
翔希が席から立ち上がり手を挙げた。そっちを向くと、思いもよらない人が俺達の席に向かってきていた。
「久しぶりだな、音無。いや、久々という程長い間会わなかった訳ではないし、長い間会っていた訳でもないが」
「榛葉先輩……」
やってきたのは、本当に思いもよらない人だった。榛葉先輩、3年生の生徒会副会長、そして俺がいた非リア同盟のリーダーだ。
「さっき面倒事に巻き込まれたと聞いてな。役に立つかはわからんがひとまず来た」
「いやぁ、本当ありがとうございます」
「ふ、2人とも知り合いだったのか」
「知り合いっつーほどでも無いんだ、顔見知り程度」
「前に少し話しただけだ、共通の知り合いがいるからな。それよりも、無駄話をしてる暇は無いだろう?」
俺を指差すと、榛葉先輩はスマホを取り出して俺達に向けた。いつどんな話をしたのか気になるけど、確かに今そんな話をしてる場合じゃない。
榛葉先輩のスマホには写真が映っていた。さっき見た大柄の人だ。
「念のため確認だが、こいつで間違いないか?」
「そうっす」
「そうか。違ったら良かったんだが、武畑で間違いない」
榛葉先輩はため息を吐いてスマホをしまった。
「榛葉先輩は、武畑先輩の事結構知ってるんすか?」
「お前達よりは、程度だ。1年から同じクラスだからな。校内でどういう感じかはわかるが、外で何してるかは知らん」
「学校ではどういう感じです?」
「大抵1人だ。誰かとつるむタイプじゃない。それは外でもそうだろう。素行はまぁ、大方想像の通りだ。学校で大きな揉め事は起こしてないが、それは揉めるレベルの相手がいないだけだろうな。あぁ、確か少し前に補導されていた」
「ほ、補導って……何をしたんですか?」
「ケンカだ。よその高校のとな。とはいえ、アイツは無傷だったみたいだが」
翔希が「うわぁ」と声を漏らした。俺は声もため息も出ず、ただ顔をひきつらせる事しかできなかった。
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