29人が本棚に入れています
本棚に追加
「ともかく、俺が考えた解決策はこれだ。っつーかこれ以外俺には思い付かなかった」
翔希がお手上げと言わんばかりに両手を挙げた。それに対して何か言おうとしたけど、俺には返せる言葉が無かった。
「俺も現状はそれしか無いと思う。ただ、あまり賛成はできん」
「ま、成功率が多少高いっつーだけだし、無事で帰ってこれるかわかんないですし」
「ぶ、無事でって……」
俺は思わず体を震わせた。でも考えるとその通りだ。こっちが話し合いのつもりだったとしても、向こうがそれに合わせてくれるとは限らない。
「榛葉先輩は他に何かあります?」
「海部が言った方法を選ばないなら、実際に被害が出るまで待つしかない。そして被害届を出す。そうすれば警察が動く。確実性はあるが、被害が出てからしか動けない。学校側も、うちの学校の生徒が被害者ならば動かない訳にもいかないはずだ」
榛葉先輩の言葉に、翔希は納得したように頷いた。確かに今は警察に相談しても無駄かもしれないけど、状況が変われば無駄ではなくなる。
でも、それはつまり、陽菜さんの身に何かがあった後になる。
「尚斗、どうする?」
「お、俺が決めるのか?」
「話し合いの場合動くのはお前だからな。どちらを選ぶかは俺や海部が決めるべきじゃない。俺はまぁ、正直に言うが俺が言った方を勧める」
榛葉先輩にそう言われ、俺は恐る恐る翔希の方を見た。翔希は俺と目が合うと、軽く息を吐いて笑った。
「どっちを選ぼうと怒りはしねぇよ。怖いっつーのは当然だししょうがない。俺だって当事者じゃねぇからあれこれ言えるだけだしな」
そう言われ、少し安心した。2人は黙って俺を見た。俺がどっちの方法を選ぶか待っているのは明らかだった。
成功するのなら。そりゃあ成功するってわかっていれば話し合いを選ぶ。でも、上手くいかない可能性だってあるし、むしろそっちの方が高いんじゃないか。だって、俺の戯れ言を黙らせるなんて簡単にできる。
殴られて痛いだけで済めばまだマシだけど、怪我をするかもしれないし、軽い怪我じゃ済まない可能性だってある。それで終わればまだ良いけど、何も解決しなかったら本当にただのやられ損だ。
「俺は…………」
最初のコメントを投稿しよう!