8ー1 危機

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  「特に何も決めてないわね。会わない事はないと思うけど……ね、陽菜」  秋葉原さんのその言葉に陽菜さんは「うん」とだけ言って頷いた。仕方ないけど、いつもの明るさはほとんど無い。 「そっかぁ。話振っといて何だけど俺らも何も決めてねぇんだよなぁ。せっかくだし夏休みっぽい事をしたいんだけどさ」 「夏休みっぽい事……花火とか?」 「良いねぇ花火。どっかで予定合わせてみんなでどうよ。なぁ尚斗、あの広場だったら良さそうだし」 「う、うん。あそこなら広いし、水さえ準備すれば良いと思う」  俺は周りを見渡しながらそう返した。やっぱりどうしても気になってしまう。 「なーんか、寧ろ雑談する事で余計体力消費させそうだな」 「ご、ごめん。せっかく気を遣ってくれてるのに」 「いや、まぁこれはしょうがねぇや。つってもほどほどにしろよ。いざという時に役に立たないと困るからな」 「い、いざという時にか……」 「身構えんなよ、殴り合うワケじゃねぇよ」  翔希はそう言って俺の肩を軽く叩いた。俺は「わかってるよ」と返事をしたけど、その後に「たぶんな」と笑われ、俺は思わず溜め息を吐いた。  学校の中まで入れば多少は安心できるだろうと思っていたけど、その考えは甘かった。まだ何かが起きた訳じゃ無いけど、同じ校舎に武畑先輩がいると思うと気が気じゃなくなる。授業中でさえ誰かが廊下を歩く足音が気になって、まるで集中できなかった。  そんな調子で半日が終わり、昼休みの時間になるともうヘトヘトだった。昨日寝られなかったせいもあるけど、まるで頭が回っていない。特に3限の数学は記憶がまるで無い。寝てはいないと思うけど……。 「あんまこういう事を言いたくねぇけど、次の授業寝とけば? さすがに授業中に何か起きるワケはねぇからさ」 「う、ううん……」  それを見かねてか、翔希がそんな事を言った。そのつもりは無くてもそうなってしまいそうだ。 「お前、今の状況ちゃんとわかってるか?」 「わ、わかってるよ。春川さんに何かあったらすぐに……」 「その春川さんが今お前の横にいる理由は?」  翔希がそう言って箸の先を俺に向けた。今? 何を言ってるんだ翔希は。陽菜さんはいつも女子何人かで弁当を……。 「……え?」  ふと横を見ると、隣の席に陽菜さんが座ってこっちを見ていた。  
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