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それが起きたのは、今朝俺が友達と学校に来た時の事だ。教室に行く為に階段を上がり廊下に出た所、走ってきた陽菜さんと衝突! 頭と頭がゴッツンコして体が入れ替わった! ……なんて事はもちろん無かったけど、ぶつかったせいで陽菜さんが足を挫いてしまった。
それで肩を貸して保健室に連れて行って、途中で俺だけ教室に行くわけにもいかなかったので治療が終わるのを待ち、2人で教室に向かった。そしてホームルーム中の教室に「遅れました~」なんて言って陽菜さんに肩を貸したまま入った訳だからさぁ大変。ホームルームが終わるなり非リア同盟の連中がものすごい剣幕で群がってきた。
……まぁその時は事情を話したらわかってくれたんだ。ただその中の1人が「陽菜さんどうだった?」って訊いてきたんだ。たぶんそれは陽菜さんの怪我を心配して言ったんだと思うけど、俺は思わず「良い匂いだった」って言ってしまったんだ。うん、そしたらもうね、その後はご察しの通りと言うか。
「……い、おーい尚斗。聞こえてるか~?」
「んぁ?」
誰かが俺の前にいる事に気付き、俺は顔を上げた。そこには見慣れた奴の姿が。
「……なんだ、翔希か」
「んだよそれ。ほら、購買行こうぜ」
そいつはそう言い教室の出口を指差した。廊下にはすでに沢山の生徒がいる。いつの間にか昼休みになっていたみたいだ。
こいつは海部翔希(アマ ショウキ)。俺の友達、というか幼なじみだ。背が高く誰がどう見てもイケメン。これまで翔希に告白した女の子の数なんて俺が知っているだけでも数えるのが面倒になるほどだ。付き合った人数もかなり多い。高校に入ってから暗めの茶髪にし、更にモテるようになった。
俺も決して見た目が悪い訳ではないと思うんだけど、こいつと比べたらもう話にならない。相対的に見たら俺なんてミジンコかゾウリムシかフナムシだ。
「や、俺は今日は……」
「ん? あ~、そうかそうか」
俺がそう言うと翔希はわざとらしくにやつき始めた。こいつも俺が今日告白する事は知っている。
「まー頑張れ。振られた時の為にコーラ買っといてやる」
「余計なお世話だッ!」
翔希が笑いながら教室から出ていく。あぁもう、あいつに俺の苦しみなんてわかる訳無いんだチクショウ!
っていかんいかん、もう昼休みだ。さっさと告白をしないと後で非リア同盟の連中から何されるかわからない。
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