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陽菜さんは男子だけでなく女子からも結構な人気があり、昼休みはいつも女子数人と一緒に弁当を食べている。
俺の計画としては陽菜さんが弁当を食べる前に告白を済ませるつもりだったんだけど、俺がぼーっとしていたせいで陽菜さんはもう女子数人と机を合わせて弁当を食べ始めてしまっている。
……こうなると物凄く声を掛けづらいんだよなぁ。
「あ~、あの、春川さん?」
意を決して声をかけた。因みに心の中で陽菜さん陽菜さんと言っているが実際に名前で呼んだ事は1度も無い。っつーか、入学してから2ヶ月経つがまともに話したのは今日が初めてだったりする。
「え? あ、音無君。今朝はごめんね?」
「あぁいや、それは全然。むし……」
むしろありがとうと言おうとしてしまった。そんな事言ったら絶対引かれる!
「虫?」
「んん、何でも無い。それよりもその……ちょっと良い?」
そう言い俺は教室の出口を指差す。すると一緒に食べていた女子達がキャーキャー言い出した。あぁもうやめてくれ! 今からあなた達の予想通りの事が起きますけども! 頼むから騒がないでくれ!
「うん、わかった。みんなちょっとごめんね」
あっさりと頷いて一緒に食べていた女子に軽く謝って立ち上がる陽菜さん。あぁもうそこの女子小声で頑張れとか言うんじゃない! そしてそっちの非リア同盟のてめぇら盗み見てるのバレバレなんだよ!
「ねぇ音無君、顔赤いけど大丈夫?」
「や、大丈夫」
そう言い俺は足早に教室から出ていく。後ろを見ると陽菜さんが小走りで付いて来ていた。やばいかわいい。
よし、これで呼び出しは成功……でもどこで告白しよう、この時間じゃ廊下も人でいっぱいだし……あ、屋上なら大丈夫か? 人はいるだろうけど結構広いし。
「屋上行くの?」
「ごめん、すぐ終わるから」
そう言い俺は階段を上り屋上のドアを開いた。屋上には何人か生徒がいたけど思ったより少なく、出入り口付近には誰もいない。
「え~っと、春川さん。その……足はもう大丈夫?」
って何言ってるんだ俺は!
「うん、もう大丈夫! ごめんね心配かけちゃって」
「いやいや、全然全然」
むしろ今日は高校生活最高の日だ。好きな子とこんなに話せるなんて!
……この罰ゲームさえ無ければ。
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