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「……で、な~んでお前は俺と一緒に帰ってんの?」
放課後、いつものように翔希と帰っていたらそんな事を言われた。
「なんでって、いつもの事だろ?」
「いやいやいやいや」
翔希が呆れたように笑う。
「普通春川さんと帰るだろ」
「いやいや、何言ってんだよお前。付き合ってる訳じゃないんだし」
友達からだし、いきなり一緒に帰ろうなんて誘ったら迷惑だし、これでもし引かれたら今日の告白がパーだ。そんな事はできない、断じて。そういうのはもっと考えて慎重にしないと!
「うわ~……こりゃ付き合う前に自然消滅のパターンですわ」
「な、何でだよ!」
「っつーかお前、告ってから1回も話しかけてなくね?」
「それはまぁ、何と言うか恥ずかしくて……」
「念の為訊いとくけど、連絡先交換したのか?」
「し、してないです……」
翔希がわざとらしく大きなため息を吐いた。
「幼なじみのお前に言うのもちょっと気が引けるんだけどさ……お前、馬鹿だろ」
「お、おっしゃる通りです……」
しまった、連絡先ぐらい交換しとけば良かった。人前で話しかけるのは気が引けるし、かと言ってそんな事でまた呼び出すのも迷惑だろうし、あぁぁぁどうすりゃ良いんだ俺!
「ったく、俺の時を見習えよ」
「確かに翔希に彼女ができた時は1人で帰ってたけども! そんな普通に女の子に帰ろうって誘えるメンタルねぇんだよ俺は!」
「告るより相当楽だろが!」
「そ、そうだけどさ~……」
それ以上何も言い返せず項垂れる俺。うぅ、へたれな自分が嫌だ……。
「せっかくのチャンスなんだからよ、もうちょい積極的にならんといかんぜ?」
「わ、わかってるけどさぁ……あ、ちょっと待って本屋寄りたい」
そう言い俺は本屋に入っていく。翔希が呆れ笑いを浮かべて俺に付いて来る。
「まぁ俺がああだこうだ言う事じゃねぇけどさ、春川さんともし付き合う事になったらそういうのよりも優先してやれよ?」
「わ、わかってるって!」
そう言いながら俺は今日発売の漫画を取ってレジに並んだ。
「あ、それ今度貸してくれよ。俺も読みてぇ」
「あぁ。今日読んで明日学校に持ってくから」
そんなやりとりをしながら漫画を買い、俺達は本屋から出ていった。
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