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「そういえば、翔希って高校入ってから彼女できてないよな」
「あぁ、それがどした?」
「いや、どうしたって事は無いけどお前らしくないっつーか。作ろうとは思わないのか?」
「別に作ろうと思えば作れるし、そんなそんな必死になったりしねぇよ」
うわっ、しれっとそういう事言っちゃうかよ。こいつがそれほどモテるのは事実だけども!
少し苛立ちながら翔希をにらんでいると、翔希のポケットから音楽が鳴り出した。
「電話か?」
「んー、まぁな。後で掛け直すわ」
そう言い電話を切る翔希。珍しいな、いつもは普通に出るのに……あ、さては。
「妹か?」
「さぁ、どうだろうなぁ」
へらへら笑いながら翔希がごまかした。どうやら当たりらしい。
翔希には1つ下に七海(ナナミ)という妹がいる。俺は翔希と幼なじみなので当然七海の事もかなり昔から知ってるんだけど、そのかなり昔から翔希の七海に対する愛情が普通じゃない。
「相変わらずシスコンだなぁ」
「んだよ、悪いかよ」
最近はシスコンと言っても怒らない有様だ。これが原因で別れた事もあるらしい。まぁ妹想いなのは悪い事じゃないけど。
そうこうしている内に俺の住んでいるアパートが見えてきた。
「どうだ、1人暮らしは。もう大分慣れたか?」
「まぁな。今度また遊びに来いよ。じゃ」
そう言い俺はドアを開けて家の中に入っていった。
俺は高校生になった時から訳あって1人暮らしをしている。訳と言っても深い事情なんて1つも無いけど。
「さてと、早速漫画を……」
袋から漫画を取り出し読み始める。その途中、陽菜さんの事を何度も思い浮かべた。
友達から、か。いや、それは全く文句無いんだけど、このままだと翔希の言った通りマジで付き合う前に自然消滅しそうだよなぁ。
……いやいや、そんなの絶対ダメだ、人生最初で最後のチャンスかもしれないんだから。頑張れ俺!
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