人生に蹴り出された日

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人生に蹴り出された日

俺、一 総悟(にのまえ そうご)は二十歳。某美大の二回生。 家族は、母と妹が1人。 今時、片親も珍しくないだろうし 特に苦労した覚えもない。 低収入のおかげでとか言うと、ぶん殴られそうだが、高校も大学も奨学金が借りられたんで希望どうり進学できた。 子供の頃から絵を描くのが好きだった俺は、中学んときの親友に誘われて絵画教室に通い、そのまま高校から美術専攻…美大って、まぁまぁ順調にいってたんだ。 このまま大学生活を謳歌して、春から三回生。就活して、適当によさそうなところに就職したら、奨学金返しつつ、返済めどがついたら30ぐらいで恋愛結婚。なんとなく人生設計してたんだよ。 真面目に一生懸命やってりゃさ、問題なんか起こる筈もないって思い込んでた。平々凡々、ありがたいじゃない? ドラマなんかいらねぇんだよ。 ったく。 ここにきて、何で…って。 まぁ、しょうがないんだけど…。 年末から不調を訴えていた母親、年明けに検査入院。このままいけば手術。 そんなこんなで俺は、大学を休学し家計を支えることになった。 まぁ、苦労した経験がないっていうのは母親談で…俺は、俺なりに苦労したと思ってたんだけど。 甘かった…。 まず、家の家計。 嘘だろ~勘弁してくれって、ぐらい貯蓄がない。 今まで、母親に任せっきりで金の話なんかしたこともなかったから、知らなかったも当然だけど…、我が親ながら母さん、無計画にも程がある。 よくこれで、俺に大学行けって言えたよな? 高卒で働けって言われりゃ、諦めもついたのに…このまま復学できなけりゃ残酷じゃね?中途半端な夢見させて。 自分の病気までは、想定の範囲外だったのかもしれないけど…最悪。 とは言うものの、俺も復学は諦められないからな。 くそ! とりあえずやれることからやるしかない。 この時、俺は俺なりに落ち込んだが、まだ希望を捨てずにいた。 持ち前のフットワークの軽さをフルに生かし、友人の助けもあってすぐにバイトの掛け持ち。 若さにものを言わせ15連勤、なんて月もあった。 だが、社会にでると大人のいい加減さに腹が立つ。 愚痴ってどうなる訳じゃないのは、わかっていても「なんで、俺ばっかり損くじ引かされてんだよ」と言いたくなる。
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