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背中から打ちのめされそうな、スタジアムの歓声から少しでも逃れたくて、ベンチに身体を向けると、誰かに右肩をつかまれ、そのまま右手を握られた。
「 相葉…。」
相手チームの主将だった。
「 そっちって公立だろ? 卒業して続ける奴いるのか? 速水は?あいつはどうするんだ?」
握った右手に力を込めた相手の真剣な眼差しに、くっと、言葉が詰まる。
自分でも気になってはいたけれど、敢えて避けていた話題だったからだ。
わからないと、答えると、お前はどうするんだと、また問い質される。
「 J1入りが内定しているあんたになんて、恥ずかしくて言えるわけないだろ。」
と、笑って聞き流すと、ようやく右手の力が緩んだ。
優勝しろよなと、相葉の肩を叩き、くるりと背中を向けた。
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