想いを胸に、散りゆく

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らしくない。 こんな無謀な賭けに挑むなんて。 本物の奇跡を、信じるなんて。 力が、全身から抜けていく。 「……」 青年は無言で、太刀をえぐり、抜いた。 支えを失い、その場に倒れ伏す経俊。 …せめて、目の前の男を倒すだけでも、いや弓を二度と引けなくさせるだけでも、できていたら。平家のこれからのためにも、良かったのだろうに。 血が失われてかじかんだ手が、掴むように僅かに動いた。 欲を言えば。 もう一度、もう一度だけ――。 瞼(まぶた)が重くなっていく。 「…………許せ」 青年が何か呟いたようだったが、経俊の耳にはもう届いていなかった。 意識が薄れていく中、最後に感じたのは、…白刃を振り上げられる気配。 (終)
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