始まりの朝

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 広場に散歩に出た。  追いかけっこやかくれんぼ等の遊びをする子供があふれ、貴婦人達が談笑をし、商人や農夫が品を引いて通るこの広場は、昔からこのまま残っているそうだ。  正しく言えば、崩れかけていたのをこの町の昔の人々が修復して今の形になっているらしい。  中心には穏やかに、そして華やかに噴水が水を噴きあげ、綺麗に丸く整えられた小さなトピアリーが周囲を囲んでいる。  そしてこの広場を中心に町は広がり、商店街にも、住宅地に行くにも、外へ出るにも、大体この広場を通るのだ。  温かみのある町並み――悪く言ってしまえば白っぽく色あせた感じ――が続く町である。  今の時代なら、都市部ではコンクリートなどを使った高層建築物等という建物が立ち並んでいるらしいが、この町はずっと昔からこのレンガの町並みを変えていない。  何故なら、変えてしまえばこの町が全て崩れることになってしまうからだ。  この町は町ごと国の貴重な遺産として保護の対象になっている。だから一つでも灰色の無機質な建物が建てば、父、村長はすぐ辞めさせられてしまうだろう。無論、そのことは町中、国中の人が知っているので、建てようなどという輩はいないが……。
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