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――――その日の夜
「……あー、美味い! やっぱエビスだなー」
お風呂あがりに缶ビールを飲みながら、自分の部屋でテレビをつける。
今日はちょっと残業が入って、会社を出るころには8時を回っていた。
帰り道にラーメン屋に寄って晩ご飯を済ませて、コンビニでビールとおつまみを購入。
そして現在、夜の10時すぎ。
テレビでは毎週チェックしているドラマが放送されている。
「もーっ、伊勢さん、今週もカッコいい! 所長もすっごくいいけど、伊勢さん派かな。ああっ、でも迷う!!」
なんてつぶやきながら、ビールを一口。
おつまみに買ってきた、チーズ味のスナックをかじる。
ドラマの登場人物の一挙手一投足に釘付けだ。
「きゃああ、いいな、いいな! アヤカちゃん、いいなー、おい!
私も伊勢さんの職場に転職したいって!」
酒の勢いも手伝って、ちょっとテンションが上がる。
……端から見たら、かなり寂しいヤツかもしれない。
――――ヴヴヴヴヴ……!
「……ん?」
そんなアルコールとドラマの世界に浸りきっていた私を、現実に引き戻す携帯のバイブレーション。
相手を確認すると、高校時代からの友達・マサミだった。
「はーい、もしもーし!」
『……あ、ひなた? 今、電話大丈夫?』
「おー! 全然OK!」
『なんかアンタ、テンション高くない? 何してたの?』
「別にー。ビール飲みながら、伊勢さんに萌えてた」
『は? ……ああ、ドラマの話か。つか、ひとり? カレシは?』
「いません」
『ん? 仕事?』
「いいえ。私にカレシはいません。カレシいない歴2日です」
『え……』
言っている意味が伝わったのだろう。
マサミが絶句する気配がした。
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