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「もう……しつこい。話すことなんて何もないし。
無駄だって。私、あんたとやり直す気なんかない。やり直せるとも思えない。
……今までありがとう。じゃあね」
まだ未練たらしく会話を続けようとする相手を打ち切るように電話を切った。
ついでに携帯の電源を落としてしまう。
「……はあ」
深くついたタメ息は、白くなり、冬の空に消えていく。
12月の東京。
駅前はマフラーやコートを身につけた人でごった返していた。
私はそんな中を、バカでかいスーツケースを持って、ヨロヨロと歩く。
……寒いな。
その内、雪が降るかも。
もうすぐクリスマス。
そのときに降ったら、ホワイトクリスマスだ。
「……ああ、そういや。今年のクリスマス、ひとりじゃん……」
情けないつぶやき。
駅前の雑踏にまぎれ、誰の耳にも届かない。
スーツケースがやたらと重たい。
ここに入っているのは、私の約1年半の生活用品。
高価なものだけここにつめて、あとは徹底的に捨ててやった。
最後の最後のあいつの顔、お笑いだったな。
心底困ったように眉毛を下げちゃって。
馬鹿みたい。
そんな顔するくらいなら、他の女と寝てんじゃねーよ。
「……寒いなあ、ちくしょう」
青井 ひなた(あおい・ひなた)。
OL歴6年。
もうすぐ28歳。
3年間付き合って、
そのうち1年半は、同棲していた彼氏に浮気されて、別れました。
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