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表に出ると司祭様と先程の男、そして怪我を負った4名、周りに集まる人々6名と計12名ほどいた。これはこの村の6分の1の人口数だ。
司祭様は何か言葉を放ちながら手に奇妙な数珠のようなものを揺さぶらせながら男の傷に手をかけている。
不思議な事にその傷は何故か癒えていっているのが俺にも感じた。
恐らくラルが俺を表に出したくなかったのはこのことだろうと考えながら周りの人に目を配った。
そこには俺の知る人物が3名。それ以外は保護者らしきものが1名、残りは検討もつかなかった。
「お前なにしてるんだ。教会のとこの男なら司祭様のお手伝いをしたらどうなんだ。」
不意に聞き覚えのある声が俺に話しかけてきた。その主を辿るとやはり、シェルマンだ。
「俺はまだ未熟なもんだから無理だよシェルマン。足手まといになるだけさ。」
「ふっ。お前は肝心なときに役に立たないんだな、ルズ、なんならコイツらの為にお前がキマイラを懲らしめに行ってきたらどうだ。それさえすりゃあお前も少しは役に立てるんじゃないか。」
いちいち悪態をつくかのように俺に突っかかってくる。正直苦手な人間だ。
そんな事を話している最中司祭様に目をやると、恐らく治療を終えたのだろう。かなり消耗しているように見える。
その時に俺は司祭様と目が合ってしまった。
司祭様は俺に無言でなぜ来たのだと言いたげに睨みつけてきた。俺は怖くなり、そのままその場を離れてしまった。
自分の知り得る司祭様が俺の知らない人に感じてしまったという点と、もう自分にとって教会が自分の居場所ではないと強く思わされたからだ。
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