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「ごめんな、騒がしくて。」
去って行く友人達を見ながら僕に軽く詫びた。
「別に、大丈夫ですよ。先輩は男女ともに人気者ですね。騒がしくて毎日が楽しそうだ。」
皮肉を込めて言う。
「ん、そうか?サンキュッ」
「えっ?」
思わず面食らってしまった。
「どうした?俺のこと誉めたんだろ?」
「…えっ、あ、まぁ…」
先輩の天然っぷりに拍子抜けしてしまった。
それと同時にそんな所も相俟って人に愛されるのだろうとも思った。
「じゃ、そろそろ行くから、部活でなっ!!」
そういうと先輩も去って行った。
僕も先輩から貰ったパンを片手に教室へ戻った。
教室に戻ると冬哉が不機嫌そうに机に弁当を広げて待っていた。
「血相変えて教室飛び出したから何かと思ったけど…沙樹、お前…そのパンがそんなに食いたかったわけ?」
怪訝そうな顔で僕の持っているパンを見つめて言った。
「…うん、そんな感じ。」
少し斜め右下を見て答えた。
「…ふ~ん、そうか。俺には…言えないか…。」
「そんな事言ってないだろ、僕はこのパンが無性に食べたかったのっ!!」
「あぁ~はい、はい。分かった、分かった。そういうことにしといてやるよ。」
「…何だよ…子供扱いしやがって…。」
「そう膨れんなって、早く飯食おうぜ。ただでさえ沙樹を待って昼休み20分も削っちまったしなっ。」
「またそうやって……イヤミな男はモテないぞっ!」
「沙樹には言われたくないわな(笑)」
ギスギスした雰囲気がいつの間にか和らいでいつも通りに戻っていた。
「一つ、言って良いか?」
冬哉が僕の顔を覗き込んで言った。
「…何?」
「お前、分かり易すぎ。」
「はぁ!?」
「嘘つく時の癖、まだ治ってなかったんだなってことだよ。」
この時冬哉に言われた癖とはどういう癖なのか未だに見当も着かない。
先輩も気づいていたのだろうか…。
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