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「なぁ、沙樹、お前最近変だよな…」
「はぁ?何処が?何で?」
冬哉の言葉に不自然なまでに目が泳いでしまう。
全く平静を装えない。
誰が見ても何かあると気付くだろう…
分かってる…
自分でも変なことは重々承知だ。
「お前…嘘が下手だな。」
呆れたような、可哀想な物を見るような目で一瞥される。
「嘘なんて付いて…」
「はいはい、判ったって。」
言い掛けたとたん軽くあしらわれ、ポンポンと軽く頭の上に手を置かれた。
「…なに悩んでるかしらんけど、どうしても辛くなったら言えよな。」
いつぞやの先輩とのやり取りが脳裏を過ぎった。
自然と影が重なる
「……」
「俺たち親友だろ?」
眩しい位の笑顔が僕に向けられる。
「…くさっ、冬哉、青春ドラマの見過ぎじゃねぇの?」
照れ隠しに悪態をついた。
とてもじゃないが自分のプライドが邪魔して「ありがとう」とは言えなかった。
「せっかく心配してんのに、可愛くないなあ~…沙樹は。」
「…男が可愛いわけないだろ?目、大丈夫か?」
「また始まったよ、沙樹の揚げ足取り。」
やれやれという表情を浮かべて態とらしいため息をつく。
キーンコーン
カーンコーン
キーンコーン
カーンコーン
予鈴がなり、友人に別れを告げ、席に戻る。
その際に冬哉が何か言ったような気もしたがその時は気にも止めなかった。
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