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「いいなァ…」と呟いて通り過ぎるアリス。唇を舐めるその舌が蛇のように妖しくうごめいた。
屋敷の大きな両開きのドアに辿り着き、両脇に立つ番兵に再び身分証を見せる。
頻繁に出し入れを繰り返しすっかりくたびれてしまった羊皮紙を検めた番兵が、扉のすぐ横の小窓に何やら話しかけると、ようやく扉が開いた。
「ご苦労さんでーす」
手をひらひらと振りながらアリスは屋敷に入った。エントランスは広く、大理石の壁がキラキラと光る。天窓から射す光が爽やかな開放感を味わわせてくれる。
エントランスの最奥にある如何にもなT字の階段の前に、今回の依頼人である領主ロンドンは立っていた。
アリスはロンドンに一礼すると、手を差し出した。
「お久しぶりです旦那。
お変わりないようで何よりだ」
「アリスくんも、随分頼もしい物を背負ってるじゃないか。それが例の…?」
ロンドンは、アリスの背中に負われた十字架を指差した。
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