三女、アリス(スペードエース)リデル

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「あんまり″まじまじ″と見ん方が良いですぜ旦那。魅了の呪いがかかってるもんで」 アリスは十字架の頭を撫でた。 しかしその手つきは異様に艶かしく、まるでアリス本人がその呪いに囚われているかのようだった。 ロンドンはそれに胃のむかつくような恐怖を覚えると、咳払いを一つして十字架から目を逸らした。 「さて、時間が惜しい、本題に移ろうじゃないか。ジャック、こっちへ来なさい」 ロンドンは階段の上の大扉に向かって呼びかけた。直後、観音開きがゆったりと動き、軋みをあげながら1人の少年の姿を曝け出した。 2本の筒と赤子程の大きさの皮袋を下げた少年は、背格好は小さいながらも、足取りには既に父親と同じ「意志の強さ」が垣間見える。アリスは自分の脊髄に甘い痺れが走るのを感じ、誰も気付かないほど僅かに内股になった。
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