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壁から水平に伸びた鉄柱に、黒ずんだ板がぶら下がっていて、微かに"eat"の文字が読み取れた。
「なんだ、意外と近くにあんじゃねーか」
アリスは十字架を背に負うとその建物へ向かった。
ドアを押して入ると、人が1人通るのがやっとの狭い通路に、カウンターに沿って椅子が並んでいる。
しかし、ほぼ空き席が無いのを見るとそこそこ繁盛しているようだった。
「ちわーっす」
アリスはカウンターの向こうから中年男性客と談笑していた男に声をかけた。奥に見える厨房には若い男しかいないから、彼が店主だろう。
「ようこそ「種馬亭」へ。…おぉ、お客さん神女か?」
「そうだけど…あンだ?まさか神女おことわりか?」
「違ェ、その逆さ。ウチの店は「神女割」やってんだ」
店主がアリスの背後を指差す。
振り返って見ると、黄ばんだ貼り紙に「神女さま割引」の文字があった。
「教会連合公認だ。決して騙し目的じゃあ無い。旅人ランチセットを頼んでくれれば半額で提供できる。なに、神女さまにはいつも世話になってるからな」
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