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「この小皿には今お客さんが食べている斉藤さんの鼻毛ラーメンが入っています。ここにね、岡山県の佐々木さんの胸毛を入れます。すると味が化学反応を起してこれまた素晴らしいハーモニーを生み出すんですよ」
店員は斉藤さんの鼻毛ラーメンに佐々木さんの胸毛をトッピングした。毛が水面に落ち、波紋が小皿に広がる。その様子は静寂している湖に落ちる葉っぱのようで、どこか幻想的な雰囲気を漂わせた。
店員の言葉に俺は心を揺さぶられたが、斉藤さんの鼻毛ラーメンもまだ味わっていたかった。
すると店員がその小皿を俺に差し出して来た。
「どうぞ味見して下さい」
「いいんですか?」
俺はその小皿を食べると想像以上の味に心が高鳴った。
全て食べ終えると、俺は席を立ち上がった。
その時、俺の髪の毛がひらひらと舞い冷水の中に落ちた。冷水はみるみる色を変え、マーブル模様を生み出した。
それを見ていた店員は驚きの声を上げた。
「これはもしや。あなたもあの液体を飲んだことがあるのですか?」
そう。つい最近俺はこの液体を飲んだ。
知り合いの金持ちが液体を買ったはいいが、飲むのが怖かったらしく俺に無理やり飲ませたのだ。しかし、自分の毛を食べてみても一向に味に変化はなく、液体は偽物だったと思い完全に忘れていたのだがまさか、今頃効果が出てきているとは知らなかった。
店員はその毛の入った冷水を無断で一口飲んだ。店員の顔が劇的にビフォアーアフターされた。
「こ、この味は。今まで味わったことのない奇跡の味だ」
店員ははしゃいで、「あははははははははは」と狂いだした。
数日もすると、噂を聞きつけたテレビ局がこぞって家へと押し寄せてきた。
瞬く間に知名度は全国区になった。
俺の毛は髪の毛から足の毛まで余す所なく販売された。
いつの間にか俺は人間国宝に指定された。
そして、俺は毛の髄までしゃぶられて、疲れ果てて死んだ。
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「ニュース速報が入りました。先日毛の人間国宝がお亡くなりになりましたが、葬式には人間国宝の毛の味を愛していた方達が数万人の列を作っている模様です」
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