変わった食べ物。

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「へい、いらっしゃい!」  俺がラーメン店の暖簾をくぐると、白いハチマキを頭に巻いた、若い青年の店員が威勢のいい声で言った。  俺は店員に席へと案内され、腰を下ろす。  俺はテーブルに置かれているメニューを手に取りメニューを確認する。  しばらく見ていると店員がコップに入った冷水を運んできて俺の前の置いた。  「ご注文はお決まりでしょうか?」  店員が満面の笑みで言った。 「はい、醤油ラーメンを一つ」  俺はメニューの醤油ラーメンの箇所を人差し指で指差して言った。  すると、店内の客が一斉の俺の方を向いた。店員の顔を見てみるとどこか驚愕や、耳にした言葉が信じられないと言った表情をしている。  まあ、その反応はおかしくはないのかもしれない。なぜなら、この店に来る客は、ある人気メニュー目当てで来る客がほぼ100%だからだ。この店に入るのに1シーズン、つまり三ヶ月間も外で待ち続けてこのお店に入ることが出来た。そして、店に入って注文したのがその人気メニューではなくて、ただの醤油ラーメンなのだから店員も何の目的で来たか分からなくなるだろう。 「もう一度、お伺いします。醤油……ラーメンでよろしいでしょうか」 「そうです。お願いします」  店員の顔がどこか血の気を失ったようにも見えた。店員はゆっくりとした足取りで厨房へと歩を進めた。  俺がこの店に来た目的。それは毛ラーメンを食べている人を見ることだ。
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