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すでに教室が割り当てられていたらしく、僕らは『1ーA』のプレートが下がるドアを開けて入った。クーラーが効く中、空いている席へと座る。
教室は普通だが、ここに来るまでのセキュリティーや施設、付属設備が最新型だった。その反動か影響かはわからないが、この『オープンキャンパス』はやけに自由度が高かった。
「なんか緊張するね」
「ああ……」「嘘だねー」
切り返しが速かった。
「だってそんな顔してるから」
「それはだな…………」近いからだよ。
席に座った途端、一緒に来た瀬川は机を動かしてくっつけた。その行動をとる前に、今の季節を考えてほしかった。
「だってこうしないと、二人でパンフレット見れないでしょ」
「二つもらえば全て解決だったんだけどね」
「省エネ精神で!」とかいって瀬川は一部しかもらわなかったけど、すでに刷ってあるので省エネも何も関係ない。そもそも僕は見るつもりはない。けれど瀬川は強引に見せつけてくるのだ。
教科書を忘れた生徒の気分に必然的に浸っていると、一人の女子生徒が入ってきた。
「ちょっと席に座ってください」
言いながら入ってきた上級生は髪が長く、あの小説の黒髪の乙女に似なくもなかった。均整のとれた体型で清純そうに見えるが、元々女子校なこともあってそこは判断に迷う。
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