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キョトンとした顔が、予想より幼い感じがした。 スーツを着ているけれど、新卒といっても良いくらい。 その顔のまま、首をかしげられた。 まったく分からないらしい。 「あの、見知らぬ女に、一緒にケーキを食べないかって言われているこの状況。 おかしくないですか??」  自分で言ってしまった。 「おかしいですね。でも、なんか面白そうで」 「・・・・はぁ」  この状況、面白いのか? 「あの。・・・・私の車が止めてある駐車場まで5分かかるんですけど。  車の中なら、暖房入れれば温かいし、座れますけど」 「じゃぁ、そうしましょうか」  そこから二人で移動して、今は駐車場に車を止めたまま、エンジンをつけて、暖房を入れている。 えっと。アイドリングストップに反してゴメンナサイ。 「紅茶も美味しいですね」 「お粗末様です」 紅茶は夕方5時に会社で淹れたものだ。 会社で飲もうと思って、天下の象さん印のポットに入れておいたのに、結局飲まずにお持ち帰り。 夕食後に飲もうと思っていたものだ。 天下の象さん印は、5時間経とうが、あたたかい紅茶を提供してくれる。 紅茶好きには堪らないアイテムだ。 ・・・・・それにしたって、口、つけてなくて良かった。 「どんなお仕事されてるんですか?」  そりゃぁ、気になるでしょうよ。 車に入るなり、紙おしぼりに紙ナプキンに、紙皿でしたから。 「えっと。印刷会社の営業事務です」 「印刷会社?」 「えっと。法人のお客様の会社案内とか、定期刊行物とかも印刷してます。 ウチの部署は、そのほかに、飲食関係の卸のようなこともやっておりまして、その関係で協力会社さんから、サンプル類を沢山いただくんです」   正直に言えば、上司が上層部に相談もせずに受けてくるんです。ハイ。 「へぇ~。それでですか。 普通に売ってるものより、お洒落だなぁって思ったんですよ」 「あ~、ありがとうございます。 お客様が自然派志向の喫茶店なんで、そういうのが多いんです」  紙おしぼり、紙ナプキンは未晒と言われる、茶色いもの。 お揃いの紙皿に、紙ナプキンをひいて、その上にケーキを乗せれば、立派なものだ。  紙コップは小さいけれど、厚手になっていて、あたたかい飲み物を出しても大丈夫。 言ってくれれば、ドリンク用リッド(フタ)も、スリーブだって有りますよ。  フォークも木製。  場所が違えれば、一端の喫茶店を再現できる。
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