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自社の製品ではないとはいえ、褒めてもらえるのはなんだか嬉しい。 そんな 嬉しい気持ちを、勇気に変えるのは、いつもより簡単だった。 「あの。同じ質問、してもいいですか?」 「?・・・ああ。俺ですか? まぁ、普通にサラリーマンです」  何の?とは聞けなかった。  私は彼が気になるだろうからと自分で説明しただけで、彼も同じようにすることはないし。 言いたくないら、聞かない。 残念だなぁ、とか、つまんないなぁ、とか思うけど…。 「それ以上は、興味ないですか?」 「え?」 「俺が、何の仕事してるか。聞かないんですか?」 「えっと。聞いて、良いんですか?」 「興味があるなら」 「・・・・・・」    なんか、全部見抜かれてる気がする。  多分、明らかに年下の男性。  夜までしっかりしたままのスーツは、それだけ生地が良いか、もともとあまり袖を通していないかのどちらか。 生地の善し悪しは分からないけれど、年齢からしたら、多分後者。  そこまでは分かるけれど。    なんだろう。  分からないけれど。  ドキドキする。 「俺の仕事、教えても良いですけど。  その代わりに、」 「その、かわりに?」 「名前、教えてください」  助手席に座っているせいで、立っているよりも近い距離。  それにさらに体を乗り出してきた彼のせいで、私は否応なく追いつめられる。  ドキドキが、バクバクになる。  車のデジタル時計が22:40を指し示していた。
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