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ふわぁっと、最初は柔らかく触れて来た唇が一度離れて、次は少し強引に押し付けられる。
幾度か躊躇うように離れるのに、直ぐに戻って来る唇。
「抵抗しなくて良いんですか?」
「……いや」
唇との距離がゼロのまま喋られてゾクゾクする。
「そんなんじゃ、抵抗って言わないですよ」
「ん、んっ」
ただ擽ったかったからの"イヤ"であって、抵抗じゃなかったことは、自分が一番良くわかってる。
けれど、こうしてキスを受け入れている自分自身が、一番理解できない。
失恋したばかりだから?
たぶん、ちがう。
押し付けられていると言うより、求められているから。
知りたい、そんな気持ちが伝わってくるから。
「また、明日」
「え?」
思考の海から浮かび上がると、綺麗な笑顔があった。
「"イロイロ"と、ご馳走様でした」
「?」
そう言って、大崎君は助手席のドアを開けて出て行く。
その場に残されたのは、あたまの回転が鈍った私。
[また、明日]
明日は金曜日。
そっか。
私が通勤に使ってる電車はいつも同じ時間帯。
いつも月曜日に目撃されていたというとは、彼も同じ電車の利用者と言うわけで。
こちらが別のアクションをしない限りは、電車の中で会うということ。
["イロイロ"と、ご馳走様でした]
色々と言われても、出したのはナポレオンパイと、紅茶と。
「!」
ー最後のアレか!!ー
シートにもたれ掛かり、ずるずると沈み込む。
「なにやってんだか」
年甲斐も無くアワアワしてしまったし、なんだか。
なんだか。
「うわぁ~~」
凄くテンションが高くなっているのがわかる。
イヤ、じゃ無かったから、これまた困る。
”また、明日”。とか言われたことも、”ご馳走様”と言われたことも。
「あ~。うん。これは、良く無いよね!」
デシタル時計は、23:15。
急いでメールを起動させて、速攻で打つ。
持つべきものは、夜行性の友達!!
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