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営業部の売上も上がった。それなのに仕入れは減った。 だからといって、納期遅れが出ているわけでも、クレームも無い。 客先や外注先は、いつでも君を指名するね。 電話を受けても、君が一番に出ないと、それはそれは残念な声をされてね。 藤澤君の元気な声を聞くのが楽しみだそうだ。 今日だって、外注先からお礼を言われたよ。 藤澤君からバレンタインのチョコレートをもらったと。 美味しくて、みんな喜んだそうだよ?」  本来は営業への直通の電話も、私が電話中で、営業が出払っている際は、総務や経理がとってくれる。 まさかそこで、そんな話が出ているとは。 「昨日はここに来る出入り業者全員に、チョコレートを配っていたね」 「!」 「総務部の逗子君が嘆いていたよ。 郵便配達や宅配便の集荷、ここに来れば女性まで、嬉しそうにチョコレートをもらっているのに、自分たちには無いと」 「あの、社内でのバレンタインは…」 「ああ。だから、この会社には義理チョコと言われるものが無い。 それでも君は毎年外部に渡している。 バレンタインのチョコレートに、ホワイトデーのクッキー。 夏は冷たいペットボトル。秋はハロウィンのお菓子。 ウチに出入りしている者たちは、その都度楽しみにしているようだね。 そうやって円滑に仕事を回す為に、私財を投入する社員はウチでは少ないんだよ」  見てくれている人がいるということに、じわりと心が暖かくなる。 それと同時に、恥ずかしさも沸き起こる。  私の名前で動いて行く仕事に携わる人たちに、気持ち良く働いて欲しい。 自社だけで無く、協力会社も含め、正当な利益を得て、健康で安心して仕事をして欲しい。 『藤澤さんの仕事なら頑張ろう』 少しでもそう思ってもらえたら嬉しい。  自社の利益を守るのは当然。 その為に働いてくれる人達の利益を守れるのは、私達営業だけだから。  会社として必要以上に経費をあげるとこは出来ない。 お金以外で、自分になりに感謝の気持ちを伝えたくて。 「私としても、優秀な社員を、つまらないことで手放すわけにはいかないんだよ」 「………え?」 ーまさか。それは、ー
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