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朝とは打って変わって、暗い気持ちで駅の改札をくぐる。
そのまま電車に乗るのを躊躇して、駅ナカの喫茶店へと足を運ぶ。
「いらっしゃいませ!」
可愛らしい雰囲気のお店は、狭いながら私のお気に入り。
いつもだった、食べる前に写真を撮るのに、今日はそんや気分にならない。
あつあつのパングラタンに、サラダ。
セットについて来るアイスティー用のガムシロップやレモンリキッドはセルフサービスなのに、取るのをわすれてしまった。
一旦立ち上がるのも面倒に感じてしまう。
ー私が、ちゃんとしなかったからー
社内営業も、営業のひとつ。
あたまの一つや二つ下げれば、経理の態度も違ったかもしれないのに。
たかだか社内の空気が悪いというだけで、経理を首にする事はできない。
ましてや、問題の私を首にする事もできない。
だったら、間接的な原因を取り除いた。
ーそんなー
嬉しそうにしていた。
東京支店勤務は、営業の花形。
だけど本社勤務は、別の価値がある。
幹部候補。
支店で揉まれ、本社に戻った社員は、そこで幹部としてのイロハを叩き込まれ、支店へ送り出される。
その時の彼らは、支店の責任者として、だ。
『藤澤君は、本社に来るまでまなく、直ぐにここを継いでもらえそうだ』
以前、東京支店に来た社長がそんな冗談を言っていた。
それは、本当に冗談だったのか。
私は自惚れているの?
それとも、本当の事?
フォークに刺さったままのオリーブが、力無くサラダボールに落ちて行った。
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