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「那津さん?」
「お、おはよう」
「おはようございます。って、なんか、元気無いですか?」
「う、ん。そんなこと無いっ」
「……次の駅で降りても良いですよ。
俺、那津さんが来てくれただけで嬉しかったんで」
どんな顔をしてるのかな、自信が無くなる。
「あの、体調が悪いわけじゃないの。夜寒かったから、なかなか寝付けなくて・・・・、」
本当のことを言えば、なんで大崎君があんなことをするのか考えていたら、朝が来ていたから。
「じゃあ、少し寝てて下さい」
「え?」
そのまま背中を車両の壁に押し付けられて、前から大崎君に挟まれる形になる。
腰には大崎君の腕が回されて、
「ちょっ!!恥ずかしいんだけど!」
「昨日と変わりませんよ」
「昨日は満員電車!今日はガラガラなのに!」
「人目も憚らないバカップルだと思わせとけばいいじゃないですか。
誰に見られようと、俺は構いません」
つよい言葉だ。
私が持ち得ない強さ。
「・・・そんなこと言って。大崎君は、私を見てたんじゃないの?」
「そうですね。那津さんは、特別ってことで」
「……わたし、何しちゃったのかな?」
「え?」
大崎君が、こんなに興味を持ってくれることをしたのか分からない。
「ホントに俺が心配なんで。
寄りかかって良いし、ちゃんと支えてますから、目をつぶっててください」
「うん」
確かに、昨日も色々あったし。少しだけなら。
私は彼の腕の中で、心地よい微睡に身を委ねた。
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