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「あ、しまった。」 「え?」  いきなり、ガバッと身体を離した大崎君について行けずに、目を白黒させる。 「ここ、守衛室に監視カメラ付いてたんでした」 「!!!!」  飄飄とした顔で、小さなカメラに向かって手を振る。 「な、な!!??」 「まぁ、多分見られたけど。那津さんの顔は写ってないですね。 その位置だと、うん、大丈夫」  そう言って、彼はやっと目的のフロアを押す。  目的の階を押すにも、社員証を翳す必要があった。  かなりセキュリティが厳しい。  静かな起動音とともに、あっという間に扉が開いた。 「っつ!」  私は顔を下げたまま急いでエレベーターを降りた。 「ごめん。那津さんがさ、あまりにも可愛い事言うから、色々我慢できなくて。 これでも一応人目を気にしたんですけど」 「さ、最後まで気にして!!」  顔を真っ赤にして食らいつく。 「ふ~ん?それって、言い換えれば、人が見てないところなら、キスしてもOKって事ですよね」 「こ、誇大解釈です!その案は却下します!!」 「えー。ここは広義で取るところですよ」  キスの後にしては色気のない会話をしながら、広いエレベーターホールの先に、更にセキュリティを通して、やっと事務所に入った。 「ようこそ、俺の城へ」  陽光に煌くビル群が眼前に広がる。  そこは、素敵なオフィスだった。
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