4人が本棚に入れています
本棚に追加
*
仕切るものが何もないフラットな空間。
一番面引くのは、グリーン真ん中に置いて、それを囲むように作られた丸いテーブル。
「個人のデスクが無い・・・・・」
「ええ。
流石にパソコンは個人のものがありますけど、席はその日の気分です。
いつも同じところだと、同じ見え方しかしないので」
「うん。・・・・私、この空間好きだわ」
「そう言ってくれると思いました」
今日一番の誇らしげな笑顔。
「適当に座ってて下さい。
いま、コーヒー用意しますから」
「あ。ねぇ、私用意しても良い?」
「え?」
「大崎君は仕事をしに来たんでしょう?
私の事は良いから。
それで、あの、少し見て回って来ても、良い?」
「分かりました。それじゃ お願いします。給湯スペースは右手ですから」
「ありがとう」
小さく笑った大崎君は、さっそくパソコンを立ち上げる。
今日は窓を向かいにした席で,仕事をする気分らしい。
さり気無く置かれたグリーンが目に優しい空間。
棚や収納ツールも、無機質なオフィスようでは無く、立派なインテリアに見える。
人数は10人くらい?
「うわ!」
給湯スペースにきて、思わず声をあげてしまった。
「那津さん?」
「あ、煩くして、ごめんなさい!
「どうかしましたか?」
「すごい本格的なコーヒーがあるんだけど!」
此処は喫茶店か?と聞きたくなるようなコーヒーメーカー。
コーヒーメーカ―用のセットもあれば、お湯を注ぐだけのインスタントも、さらには豆まである。
ー会社でコーヒー豆挽いちゃうってことよねー
手挽きのミルもあるし。
ここの会社の人は、どれだけコーヒーが好きなんだろう??
「息抜きも重要ですから。
初期費用はかかっちゃいましたけどね」
「これだけのものを用意したらね~。
これじゃ喫茶店に行かなくて済んじゃいそう」
「だったら那津さんが、コーヒーを飲みたくなったら、ウチに来てくれますか?」
「残念でした。私はどちらかというと、紅茶派なの」
そんな軽口を叩く。
「それ、使ってみますか?」
「ううん。覚えきれないから、自分のやり方で淹れるわ。
大崎君も喉渇いてるでしょ?苦いの大丈夫?」
「苦いのも甘いのも大丈夫です。
ちなみに、今色々餓えてるんで、 食べたいのも、飲みたいのも、那津さんです」
サラリとすごい言葉が返ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!