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ー"食べる"はありだけど、"飲む“ってなんか卑猥に聞こえるんですけどー
…いやいや、オカシイ。食べるのもナシだ!
ー潤美があんなこと言うから!ー
『喰っとけば?』
頭の中で悪友が人の悪い笑みを浮かべる。
「那津さん。そんなに深刻に悩まないで下さい」
「……人をからかって。
良いわ。思いっきり濃いヤツ淹れてあげる!」
「那津さんが淹れてくれるなら、何でも飲みますよ」
ーそんな甘い言葉に騙されないんだから!ー
「青汁が無いのが残念だわ!
あったら入れてやったのに!!」
すねた声を返すと、笑い声が返ってきた。
「良かった。普通に美味しい」
「だって、勿体無いもの」
豆から挽いたコーヒーの良い香りが広がる。
「紅茶を頂いた時も思ったんですが、那津さん、コーヒーを淹れるのも御上手なんですね」
「ありがと。」
「お世辞とかじゃなくて、本気です」
「それは、ますます嬉しいわ。でも、私の中ではまだまだなの。
私の会社の近くに、小さな喫茶店があるんだけど。
そこのオーナーさんが淹れるコーヒーなんか、すごいのなんのって!
コーヒーが好きなら、是非飲んでみて欲しいわ!」
「那津さんのお勧めですか。それは興味がありますね」
白いカップを傾ける仕草も決まっている。
見とれて顔がニンマリしてしまいそうなのを、必死でごまかす。
「ほんと、お勧めなの!
オーナーは私と同年齢の夫婦でね。
二人とも会社を辞めて、喫茶店を開いたんだって。
奥さんは、私と一緒で紅茶派でね。
スコーンとか、パンケーキとかも美味しいの!
大崎君も気にいると思う」
「じゃあ、今度はそこに連れて行ってくれますか?」
「もちろん!」
「ぷっ、あはは!!」
弾ける様な笑い声に、キョトンとしてしまう。
「那津さんが誘ってくれたんですからね。
デートの約束。
忘れないで下さいよ?」
可愛くしょうがないものを見る様な、そんな眼差しを向けられる。
そんな目をされたら、こちらだって期待してしまう。
ーどんどん引き込まれるー
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