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結局、彼が出て行く時にも声をあげてしまうくらい、乱れに乱れた所を見せてしまった。
「背中、痛くないですか?
途中から,全然気遣ってあげられなかった…」
「・・・・・気を使うかなら、まずこんな所でしないと思うんだけど」
「何から何までスミマセン」
先ほどまでの色気はどこへ行ったのか。
彼が小さくなっているのが可笑しい。
「お互い様」
「え?」
「拒まなかった私も悪いし」
直接的な言葉だったけど、嬉しかったのも確か。
『もっと那津さんの中にいたい』
そんなこと言われたのは初めてだ。
頭は随分落ち着いたのに、未だびくびくと震える身体を持て余す。
「震えてる……」
心配そうに言われても困る。
「刺激が強過ぎたの!!」
「っは!!」
やっぱり、色気がないのは私の方。
タオルを渡され、シャワーが無いので、お湯で濡らしたタオルで丁寧に身体を拭いた。
化粧室で、落ち切った化粧を回復させる。
なんどか取り繕って事務所に戻ると、既に彼が仕事をしていた。
「お帰りなさい」
「・・・・・ただいま。」
変な気分。
”お帰りなさい”に、”ただいま”なんて。
家族以外に言わないから、なんだかそれだけで距離が縮んだ気がする。
ほんとに些細なことで、私を喜ばせてくれる。
「・・・・ねぇ、ここで仕事するの?」
それにしても気がかりなことが一つ。
彼の席は先ほどと同じ。
つまりは、・・・あんなことがあった場所。
「ちゃんと拭きましたから」
[何を当たり前のこのを]という顔をされた。
「そういう意味じゃなくて!・・・・辱めだわ!」
「俺としては、此処だと、すごく ”やるき”が出るんです」
「そのやる気、カタカナじゃなきゃいいけど」
「へえ~。那津さんもそんな事言うんですね」
にやりと笑われる。
・・・・墓穴堀は私の様だ。
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