2/16

9/25
前へ
/92ページ
次へ
* 「ね、ねぇ大崎君。これはどこで印刷してるの?」  明らかな話題転換。 晴れ晴れしい笑みを見せてくれた彼は、その話に乗ってくれた。 「それは、ネットかな。あとは、近くのオンデマンド出力とか」 「部数、どれくらい作る?」 「もしかして、安く出来たりする?」 「提案は出来ると思う。 オンデマンドだと即金だったりするでしょ?ウチの会社なら、掛け売り出来ると思うけど」  業績によっては前払いってこともあるけど。 「助かります!」  私もパソコンを一台借りて、見積を始める。 頭の中に叩き込んだ単価で、最低限の粗利をつける。  会社案内、封筒各種、名刺、ロゴ入りクリアファイル、etc。 「楽しそうですね」  隣で資料を読んでいた大崎君が苦笑する。 「仕事中毒なの」  バッグの中には可愛いハート形のメジャーと、実用性にとんだ電卓が入っている。 荷物になるからいつも置いてこようと思うのに、何故か入っている。  さっきも寸法を測り出して、早速笑われた。 「会社案内とか名刺とか、デザインどうしたの?」 「知り合いがデザイナーやってて、安く頼めたんです」 「じゃあ、データもちゃんと作ってあるっと。 それだと、こんな感じかな?」  自分個人のクラウドに自社の見積フォーマットが入っているのは、やはりどうなのか。 ネットから呼び出して、入力して、まずは画面を見せた。 「ちゃんとした見積ですね」 「本職ですから」 「今までの経費と比べたいから、そのデータもらって良いですか?」 「もちろん。PDFで良い? ちゃんと比べてくれると嬉しいわ。 なにかあれば言ってね。ちょっとだったら、合わせられるから」  一度席を譲ってほしいと言われて席を立つと、その間に手早く社内ランに保存したらしい。 「あ、もうこんな時間か!」  一息ついた私達の視線が、時計に伸びた。 一時半を過ぎている。 「メシ、食いに行きましょうか」 「うん」  そう言って例のエレベーターに乗り込み、やはり私は小さくなって笑われた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加