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「ふい~。おなかいっぱい」
見た目は普通に感じたのに予想以上にお腹に溜まった。
通常サイズでこれなら、大崎君に胃袋には一体どれほどのものが納まったのだろう?
「大崎君って燃費悪いんだね~」
「燃費って自動車じゃないんですから。
・・・那津さんの中で俺って何扱いされてるのか理解に苦しむときがあります」
「燃費って使わない?」
「あまり使いませんね」
そうかなぁと、小首をかしげる。
「よく食べるとは言われますけど、実際は一日一食なんですよ?」
「え!!??」
今日の中で一番の衝撃。
「な、なんで一回しか食べないの!?」
「そんなに驚かなくても。
そうですね。食事に時間を割く暇がないというか、それほど気にならないというか」
「・・・・・人生損してる!
毎食美味しく食べてこそ人生よ!?」
「そこまで言いますか。
そうだなぁ~、あまり、美味しいと感じないもので」
「・・・・・」
思わず、がしっとその手を掴んでいた。
「さっきのご飯を食べても?」
思わず縋るような声になる。
あれほど美味しい料理を美味しいと感じられないなんて、本当に人生損してる。
「いえ。大船さんの料理は美味しいです。
だから一日一回しか食べないのかも・・・・」
考えるような仕草に、余計な心配が膨らむ。
「・・・・ねぇ、大崎君?
君は確か、実家暮らし、よね?」
言外に、料理はどうしているの?と尋ねる。
「実家ですけど、両親はいないんです」
「っ!!」
握っていた手を、思わず離してしまった。
「ごめんなさい。・・・私、おせっかいよね」
「いいえ。那津さんは俺の心配をしてくれてるって分かってますから。
だから、そんな顔しないでください」
きっと情けない顔をしているんだろう。
ズカズカと彼の傷に触れておいて、自分勝手に傷ついてる。
「・・・・まったく」
「いひゃい!?」
彼の長い指が伸びて来たと思うや否や、頬を引っ張られた。
「子供のころからの話です。
それに本当に居ないのは母だけで、一緒に暮らしてはいませんが、父も義母も、兄もいるんです」
「・・・・子供のころから?」
彼が子供というのだから、本当に小さな頃だったのだろう。
小さな男の子がお母さんを失い、父と義理のお母さんと、お兄さんと暮らしているのを思い浮かべて、悪いことだと思いつつも、勝手に悲しくなってしまう。
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