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「さてと、今日は冷凍食品買わなきゃ」  会社を出て、電車で小1時間。  都内から離れたベッドタウンが、私の住む街。  駅から更に車で15分。  そこが実家。  ”彼氏”と別れた私は、今だけと実家に戻って来ている。  失恋して大泣きできるほど本気でのめり込む前だったとはいえ、お互いの部屋を行き来する仲ではあったから、正直、暫く私の部屋には帰りたくない。 ただし、 『自分の食べる物は、自分で払いなさいね』 失恋の痛手を受けた娘にも、母は平然と言ってのけた。 世知辛い。 違う意味で涙が出そうだ。  会社で疲れた身体に鞭打って、夕食とお弁当の食材を買って帰る。 駅前に出来た商業施設の中には、なかなかお安いスーパーが入っていて、帰宅途中に寄れて便利。  ”木曜日は冷凍食品の日”と、デカデカと書かれたポップの下で、さらに安い商品を求めて目を走らせる。  お安くて、腹もちするのが一番。  あとは、彩も良いと嬉しい。  買いあさった冷凍食品を、2円引きのために持ち歩いているエコバッグに詰めていると、主婦になった気分。 この歳なら、主婦はもちろん、お母さんになってる年代ではあるけれど。 暗くなりそうな頭を振って気分を立て直すと、その視界に可愛いパッケージが入ってきた。  スーパーと同じフロアに入っている、某有名洋菓子チェーンの特別売場。 いかにも『バレンタイン』も売り場に、引き寄せられる。  あんなことがなければ、大好きな洋菓子店でチョコレートを買って、彼に渡すつもりだった。  決戦前に不戦負が決まった私は、今年はちゃんとしたチョコレートを一つも買ってない。  社内は バレンタイン もホワイデーもない。  社長が煩わしいからと、その制度を撤廃したから。  確かに、会社に持ってくるなら、上司にも渡さなければならない。  貰った上司は、年齢と立場に見合ったお返しをしなければならない。  それが煩わしくなって、本社含め、支店一同、バレンタインはナシ。  せめて協力会社の人にと、一個300円以下のチョコレートを買ったくらい。  流石にそれを”バレンタインのチョコレート”とは言わない。
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