序章

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「命とは、天命とは神からの授かりものである」  壇上にいる白髪頭の神父が、力強く言った。 「生まれるときに生まれ、死せるときに死す。限りがあるから尊いのである」  出席者が神父と修道士ばかりのこの集会を開始する際の、決まり文句のような言葉だろう。それを聞いていた少年は、小さな胸を痛めた。壇上の深谷(ふかや)神父の言葉どおりだとすると、自分はまるで尊くない存在に位置づけられるからだ。  聖堂の壁際に貼りつくように立っている少年の暗い考えもおかまいなしに、深谷神父は続けた。 「だからこそ魔術と科学を用い、人を不老不死という神の領域に踏み込ませようとする背教者の集団を、我々は看過しえぬのである」
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