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ラジムは砂漠の舟。星を追うように確実に、目的地に導いてくれる。
だが“墓場”には“掃除屋”がいる。
身動きがとれなくなったその日が、兄ちゃんの命日になるぞ――と。
こいつに乗っている限りは大丈夫だ、安心しろとは言っていたが……。
ジューダスが日射しに目を細めた時、ラジムが短く啼いた。
手綱を引いて足を止め、辺りを見回す。
「……」
風が吹き、砂がさらさらと音を立てて舞い上がる、先から幾度と見てきた単調な風景に目立った変化はない。
頭巾の下の黒みがかった青の瞳で周りの様子を窺い、全身で気配を探る――ラジムが空を仰ぎ、また啼いた時、黒い薄絹に覆われた形の良い唇が微かに開き、引き結ばれた。
さらさらという音が辺りから聞こえる。
風もなく砂が流れ、蠢く音が。
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